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安納美人 WEB小説

『マイ・スイートホームタウン』

種子島を離れて3年。
夢に描いた都会での生活は現実には結構寂しいもので、仕事だって上司から怒られてばかり…。
こんなはずじゃなかったのに。いっそのこと、すべてを投げ出して島へ帰ろうか?
そんなことばかり考えていたある日。実家から、サツマイモが届いた。
両親が作ったサツマイモ。子供の頃から私の大好物だった。
あの澄んだ海に囲まれた、のどかな島に思いを馳せながら、同封されていた母からの手紙を読む。
頬に一粒、涙がこぼれた。

元気でやっていますか?仕事は頑張っていますか?
お父ちゃんとお母ちゃんは、さつまいもの収穫の時期を迎え、忙しい毎日を送っています。
さっそく、今日採れたばかりのさつま芋を送ります。
食べたら自然と顔がほころんでしまうくらい、密たっぷりで甘いサツマイモが今年もできたよ。
もし、辛くて、逃げだしたいことがあった時は、この芋を食べて思い出してごらんなさい。
種子島の澄んだ海、白い砂浜、緑一面に広がるさつまいも畑を…。
ここが、あんたの帰る場所だよ。
帰る場所があるってことは、とても幸せなことなんだよ。
帰ってくることはいつだってできるんだ。
だから辛い時は、「あともう少し。あともう一歩。」と思いながら精一杯頑張りなさい。
そして精一杯頑張って疲れた時は、いつでも島へ帰ってきなさい。
この島は、頑張ったあんたをきっと優しく迎え入れてくれると思うよ。
あんたには笑顔が一番似合うから。いつも笑顔を忘れず、元気に頑張りなさい。

お母ちゃんより

P.S たまには電話よこしなさい。お父ちゃん、あんたの事が心配みたいで、毎晩電話の前で掛ってくるのを待ってるのよ(笑)

「いつでも帰れる場所がある」そう思ったら、あと少しだけ頑張ってみようと思えた。
涙を拭い、蒸かしたばかりのイモを一口かじる。
甘くて、懐かしい島の香りが口いっぱいに広がった。自然と笑みがこぼれる。
これを食べたら、実家へ電話をしよう。
焼酎片手に、電話とにらめっこしている父の姿を思い浮かべたら、なんだかとても温かい気持ちになった。

※この物語はフィクションです。
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